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1.流涙症とは

涙は目の表面を潤したのち、目がしらにある涙点という小さな穴から吸い込まれ、涙小管・涙嚢・鼻涙管を通って鼻腔に排泄されます。この涙の排泄路を涙道といいます。
通常は分泌と排泄のバランスがとれていて涙が外にこぼれることはありませんが、分泌が増えたり排泄が悪くなったりすると涙がまぶたの外にあふれるようになります。このように涙がまぶたの外にこぼれる状態を流涙症といいます。流涙症は涙道の詰まりすなわち涙道閉塞によることがほとんどです。

 

2.流涙症の治療(主に3つの手術方法)

現在、流涙症の手術治療には、主に次の3通りがあります。

  1. 涙嚢鼻腔吻合術鼻外法(皮膚を切って行うバイパス手術)
  2. 涙嚢鼻腔吻合術鼻内法(皮膚を切らずに鼻から行うバイパス手術)
  3. 涙道内視鏡を用いる涙管チューブ挿入術(チューブ挿入術)

それぞれの方法の特徴を表にまとめると、次のようになります。

①涙嚢鼻腔吻合術鼻外法
(皮膚を切って行うバイパス手術)
②涙嚢鼻腔吻合術鼻内法
(皮膚を切らずに鼻から行うバイパス手術)
③涙道内視鏡を用いる涙管チューブ挿入術
(チューブ挿入術)
皮膚切開 する しない しない
骨切削 する する しない
手術時間 約1時間 約1時間 約30分
適応症例 鼻涙管閉塞
慢性涙嚢炎
全涙道閉塞
鼻涙管閉塞
慢性涙嚢炎
総涙小管閉塞
鼻涙管閉塞
利点 成功率は最も高い
より難症例にも可能
体への負担は
①よりは軽い
成功率は③より高い
体への負担が
最も軽い
欠点 体への負担が大きい ③よりは適応が広いが、
鼻の条件によっては
不可能なことがある
閉塞が軽い症例に
限られる

 

3.当院での流涙症の治療

代表的な治療法

①涙嚢鼻腔吻合術鼻外法(皮膚を切って行うバイパス手術)

当院では流涙症の治療法である涙道再建術のうち、古典的バイパス手術(①の涙嚢鼻腔吻合術鼻外法)の症例が2000例を越えました。この手術の件数としては全国的にも類を見ないものです。涙嚢鼻腔吻合術鼻外法は専門性の高い手術であるため、総合病院であっても積極的に手がけている施設は少なく、入院・全身麻酔で行われることが多い手術です。当院では開院以来この手術を積極的に手がけており、すべて局所麻酔・日帰り手術で行っています。
涙嚢鼻腔吻合術鼻外法は、成功率は高い一方、患者さんの負担がやや多いという難点がありました。しかし、世界的には標準的な術式と考えられており、感染を伴う緊急例や重症例に対しても行えるという特長があります。

②涙嚢鼻腔吻合術鼻内法(皮膚を切らずに鼻から行うバイパス手術)

当院ではパイパス手術を鼻の中から行うことで皮膚に傷を作らない、切らないバイパス手術(②の涙嚢鼻腔吻合術鼻内法)のための最新の器械(「IPC® ENTシステム」)を導入し、この手術にも対応できるようにいたしました。この手術は、鼻の中での操作がほとんどなので、眼科よりも耳鼻科の手術に近いものといえます。涙嚢鼻腔吻合術鼻内法に精通した耳鼻科医による講義と実技指導からなる研修会が定期的に開催されており、院長はこの研修会に継続的に参加して研鑽を積んでいます。

③涙道内視鏡を用いる涙管チューブ挿入術(チューブ挿入術)

最近日本では、涙道内視鏡を用いる涙管チューブ挿入術という、より負担の少ない手術が普及しており、当院でもチューブ挿入術の症例が増えています。この術式では、患者さんに比較的少ない負担で流涙症を治すことができます。
ここ数年の間にチューブ挿入術の治癒率が上がってきましたが、それでもまだチューブ挿入術に限界はあり、バイパス手術の方が適している、あるいはバイパス手術でないと治せないような難しい症例も少なくありません。
チューブ挿入術の成功率を高めるには、チューブ挿入術とバイパス手術のどちらが適しているか、を見極めて、症例に応じた選択をすることが重要だと考えます。
当院では①涙嚢鼻腔吻合術鼻外法、②涙嚢鼻腔吻合術鼻内法、③涙管チューブ挿入術、の3種類の方法すべてに対応可能であり、それぞれの症例に最も適した術式を選択しています。

 

成人の場合と小児の場合

①成人の流涙症

涙道が詰まると、常に涙があふれるためしょっちゅう涙を拭いていなければならず、目のふちがただれたり、うるんで見えにくくなったりします。とくに涙嚢よりも下流での閉塞の場合は、涙嚢内に滞った涙が汚染されて粘液や膿のような汚い目やにが出るほか、涙嚢部(目がしらの内側)を押さえると涙嚢内容が逆流してくることがあります。このような状態を慢性涙嚢炎といいます。まれですが、慢性涙嚢炎の経過中に涙嚢内容に細菌が感染して激しい炎症を生じると、目と鼻の間がひどく腫れて痛んだりすることがあります。このような状態を急性涙嚢炎涙嚢周囲炎といいます。
成人の涙道閉塞の治療は、目と鼻の間の皮膚を切開し涙嚢粘膜と鼻粘膜をつないで涙の流れるバイパスを新しく作る、涙嚢鼻腔吻合術鼻外法という方法が、世界的に標準と考えられています。バイパス手術の別の方法として、手術を鼻の中から行うことで皮膚に傷を作らない、切らないバイパス手術(涙嚢鼻腔吻合術鼻内法)もあります。
当院では開院以来、涙嚢鼻腔吻合術鼻外法を積極的に手がけており、これまでに当院で行ったこの手術は2000例以上になります。手術は局所麻酔で30分~1時間で、日帰り手術で行います。切らないバイパス手術(涙嚢鼻腔吻合術鼻内法)にも対応できます。

②小児の流涙症

赤ちゃんの中には、鼻涙管が鼻腔に開くところが粘膜で覆われたままになって開通していないことがしばしばあり、この状態を先天性鼻涙管閉塞といいます。このような赤ちゃんはいつも目がうるんでいます。大人と同様に涙嚢内に粘液や膿が貯まり、これが目やにとなって出てくるようになったものを新生児涙嚢炎といいます。
小児の涙道閉塞の治療は、 生まれた時点で鼻涙管が開通していなくても、成長に伴って自然に開通して治癒する場合がありますが、自然治癒がない場合には処置を行います。
先天性鼻涙管閉塞には、一般的にブジーとよばれる細い棒状の器具を涙点から挿入して閉塞部を開放する涙道プロービングという方法が非常に効果的で、多くは外来での短時間の治療で劇的に治癒します。
当院では涙道内に洗浄液を注入しながら涙嚢を圧迫し、水圧で閉塞を開放する加圧涙道通水という方法を考案して行っています。検査から治療を一連の操作で行うことができるため、検査で閉塞が分かるとそれに続けて加圧涙道通水を行います。加圧涙道通水で開放できればそこで治療終了で、加圧通水で開放できないときには涙道プロービングを行います。涙道プロービングの際には、独自に考案したブジー型洗浄針(Bangerter・保手浜針)を用いています。加圧通水と涙道プロービングを併用することにより、他の眼科で何回も治療を受けても治らなかったような症例にもよい結果が得られています。当院では、生後6か月から1歳までの間に処置を行うことを標準としています。
さらに、外来治療で治らないような難しい症例には、全身麻酔下で内視鏡を使って涙道プロービングを行なったり大人と同様のバイパス手術を行なったりします。全身麻酔での手術は、連携先の総合病院に入院していただき院長の執刀で行います。通常は2泊3日の入院になります。