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第13回 日本涙道・涙液学会で発表をしました

7月12日(土)・13日(日)に,パシフィコ横浜で開催された第13回日本涙道・涙液学会に参加し,「ELDRが不成功だった小児の慢性涙嚢炎に涙嚢鼻腔吻合術鼻外法を行った1例」という演題を発表しました。
ELDRとは,涙道内視鏡を使った涙管チューブ挿入術のことで,涙嚢鼻腔吻合術鼻外法とは,皮膚を切開し,骨を削って行う涙道のバイパス手術のことです。

赤ちゃんの流涙症(先天鼻涙管閉塞)の治療については,生後 6~9 か月頃局所麻酔プロービング(いわゆる涙道ブジー)を行う,可能であれば涙道内視鏡を使う,ということが現在の標準治療とされています。
大人の流涙症の治療では,涙道内視鏡を使った涙管チューブ挿入術(ELDR)が最近特に注目されています。皮膚を切開したり,骨を削ったりしないことから患者さんの負担が軽く本来の涙道を元の形に戻すという点で理にかなっているからです。
これに比べると,涙嚢鼻腔吻合術鼻外法は,皮膚を切開しますし,骨も削りますので,負担が大きい手術として敬遠されがちです。しかし,涙管チューブ挿入術で治せる流涙症には限りがあるのに対し,涙管チューブ挿入術では治せないような難しい症例でも,涙嚢鼻腔吻合術鼻外法でなら治せるということもあります。
こういったことから,外国では,涙嚢鼻腔吻合術鼻外法は涙道手術のゴールドスタンダード(=最も信頼性が高く,広く認められている治療法のこと)であるといわれています。

今回発表したのは,局所麻酔での治療時期を逃していて,全身麻酔涙道内視鏡を使った涙管チューブ挿入術(ELDR)を行ったが治らなかった,という3歳児の症例についての報告でした。大学病院から当院に紹介され,尾道総合病院で,全身麻酔涙嚢鼻腔吻合術鼻外法を行いました。お子さんなので,抜糸をはじめとする術後の処置を大人と同じようにはできないと考え,これらの処置を省略する工夫を加えました。その結果,大人と同じような術後の処置を行わずに治すことができました

涙嚢鼻腔吻合術鼻外法は,決して今風のスマートな低侵襲手術(体への負担を軽減するために,より小さな切開や内視鏡などを用いて行う手術)ではないけれど,条件を問わず確実に治せるところに最大の強みがあります。この発表に対して,小児の涙道診療がご専門の先生から,小児であっても,涙道手術のゴールドスタンダードは涙嚢鼻腔吻合術鼻外法である,ということが広く知られてほしいとのコメントをいただきました。

当院では,以前から涙道閉塞の治療に涙嚢鼻腔吻合術鼻外法をメインに行っており,小児から大人まで,治療の難しい症例も含めて2700例以上の経験があります。これは,ほかの誰とも圧倒的に違う経験値だという自負を持っています。
涙道内視鏡を使った涙管チューブ挿入術(ELDR)で治せるような軽症例にはチューブ挿入術を行っていますが,涙嚢鼻腔吻合術鼻外法の方が適していると考えられるケースには,迷わず涙嚢鼻腔吻合術を行っています。治療法の選択肢を広く持ち症例を見極めて最も良い方法を選べることが当院の強みだと考えています。
大人だけでなく,小児であっても,涙嚢鼻腔吻合術鼻外法が涙道手術のゴールドスタンダードであると評価されたことで,当院では,今後もこれまで以上に信念をもってこの手術に取り組んでいきたいと思います。