眼疾患

まぶたのけいれん

「まぶたがピクピク動くのが気になる」という症状を、診察時にお聞きすることがときどきありますので、この場をおかりして少し説明させていただきます。

まぶたのけいれんを起こす病気には、3つのタイプがあります。
① 眼瞼ミオキミア
② 片側顔面けいれん
③ 眼瞼けいれん


I. 眼瞼ミオキミア

【症状】
眼瞼ミオキミアは、疲れたときなどに、まぶたの一部がピクピクと動くものです。まぶたを閉じる筋肉(眼輪筋)にけいれんの症状があっても目はふつうに開けることができます。いつの間にか起こり、いつの間にか消え、長くは続かないのが特徴です。眼瞼攣縮と呼ぶこともあります。

【原因】
肉体的な疲労だけでなく、精神的なストレスでも起こりやすく、コーヒーやアルコールの摂取が誘因となる場合もありますが、はっきりとした原因はわかっていません

【治療】
通常は数日から数週間で自然に治まりますので、十分な睡眠・休養をとり、心と体をリラックスするようにして下さい。
もし、けいれんがずっと続く場合には、ほかの病気の可能性も考えられますので、早めの受診をお勧めします。

 

II. 片側顔面けいれん
【症状】
片側眼瞼けいれんは、片側のみ(右側か左側かの一方のみ)だけれど顔面全体に痙攣が起こるものです。発症初期には眼瞼ミオキミアに似た症状のことがありますが、進行すると、まぶただけでなく、口の周りや頬の周りにある筋肉もけいれんを起こします

【原因】
顔の筋肉(顔面筋)には、目の周りにあってまぶたを閉じるために働く眼輪筋や、口のまわりにあって唇を閉じるために働く口輪筋などが含まれます。これらの顔面筋を動かしているのは顔面神経のはたらきです。片側眼瞼けいれんは、顔面神経が脳の中の脳幹から出る部分で、動脈瘤や腫瘍などによって顔面神経が圧迫されることによって起こることが多いといわれています。顔面神経は左右一対あるため、圧迫された片側の神経が関係している側、つまり顔面の片側だけにけいれんが起こるわけです。

【治療】
動脈瘤や腫脹など、顔面神経を圧迫している原因が分かれば、動脈瘤のクリッピングや腫瘍切除などの脳神経外科的な治療を行います。
また、けいれんしている筋肉にボツリヌス毒素(ボトックス®)を注射する、ボツリヌス療法も効果的といわれています。

  • ボツリヌス療法について
    ボツリヌス毒素とは、食中毒の原因としても知られているボツリヌス菌が産生するたんぱく質で、神経から筋肉への情報伝達を阻害するはたらきを持っています。けいれんしている筋肉にボツリヌス毒素を注射することによって、筋肉を収縮させている神経の働きを抑え、筋肉の緊張を緩めて症状を和らげます。
    ボツリヌス毒素の効果は、注射後約1週間から現れ、約1か月で最大となり、徐々に弱まりながら3~4か月で消失します。症状が再発する場合には再度注射を繰り返します。

 

III. 眼瞼けいれん
【症状】
眼瞼けいれんは、両目のまぶたにけいれんが起こるものです。両側のまぶたを閉じる筋肉(眼輪筋)が、持続的に収縮し、それが間をおいて繰り返します。進行した状態では、自分の意志ではどうすることもできません。初期症状としては、目がショボショボするまばたきが多いまぶしい、などがありますが、進行すると、目をうまく開けていられないため、人や物にぶつかって一人では歩けないなど、生活に支障が出るようになります。さらに進行すると、自分の意志ではまぶたを開けることができなくなり、視力には問題がないのに機能的に失明をしたような状態になります

【原因】
脳内にある、運動を抑制するシステムが機能障害を起こすことによって生じると考えられていますが、原因が完全には解明されていません40~70代の中高年者に多く、男女比は1:2~3と女性に多いといわれています。

【治療】
まだ原因が解明されておらず特効薬はありませんが、症状を抑える対症療法として、ボツリヌス療法が最も効果的とされています。
ほかに、上まぶたを機械的に支えてまぶたが閉じることを防ぐ、クラッチ眼鏡を使うこともあります。

 

●最後に
「まぶたがピクピク動くのが気になる」といわれる方のほとんどは、最も軽症の眼瞼ミオキミアです。通常は数日から数週間で自然に治まるので心配はいりませんが、もし、けいれんがずっと続く場合には、片側顔面けいれんや眼瞼けいれんなど、ほかの病気の可能性も考えられますので、早めに当院にご相談下さい。