過去のブログ記事「新型コロナウイルスと目-感染しない、感染させないために」を書いてから、かれこれ3ヶ月が経ちました。その間に、新型コロナウイルスに関してさらにいろいろなことが明らかになってきました。なので、ここで前の記事の補足をかねて、「新型コロナウイルスと目―感染しない、感染させないために その2」を書こうと思います。
新型コロナウイルスに感染した患者さんが結膜炎を合併する頻度は、およそ1~3%と考えられています(※1)。新型コロナウイルス感染症の症状としてよく知られるようになった、味覚異常や嗅覚異常を合併する頻度は30~50%台といわれていますので(※2,※3)、結膜炎の頻度は味覚異常や嗅覚異常の1/10かそれ以下ということになります。
また、新型コロナウイルスによる結膜炎は、新型コロナウイルス感染症のどの段階であっても合併するといわれており、発熱や咳などの全身症状が出るよりも前に結膜炎を発症したという報告もありました(※4)。しかしその後の多くの報告を見ると、全身症状が出たあと、しばらく経ってから結膜炎になる、という方が多数派のようです。
1~3%という結膜炎の合併率は、新型コロナウイルス感染症のすべての時期を含めた数字ですので、結膜炎が新型コロナウイルスの最初の症状である可能性は低いと考えてよいと思います。
医療従事者は、可能性が否定できない限りは最大限のことを考えて治療に臨む必要がありますが、患者さんの立場では、結膜炎の症状が現れたといって、それだけで新型コロナウイルスに感染したのかも知れない、ということに直結させて考えるのは、やや過剰な心配であるように思えます。
どちらにせよ、結膜炎の症状が現れたら、それがコロナウイルスによるものかどうかに関わらず、早い段階で受診し、適切な診断と治療を受けることが望ましいことには変わりがありません。
それ以前にまずは、正しい知識を得て、正しい予防法を実行することが重要です。眼科医の立場からみた、新型コロナウイルスに感染しないための方法を、前のブログ(新型コロナウイルスに感染しないために-眼科医の立場から)に紹介していますのでご参照ください。
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※ 参考文献
- 日本眼科医会:新型コロナウイルス感染症の目に関する情報について(国民の皆様へ)第2報. https://www.gankaikai.or.jp/info_covid/nihou.pdf
- Andrea Giacomelli, et al. Self-reported olfactory and taste disorders in patients with severe acute respiratory coronavirus 2 infection: a cross-sectional study, Clinical Infectious Diseases 2020; 71(15): 889–90
- Mercante G, et al. Prevalence of Taste and Smell Dysfunction in Coronavirus Disease 2019. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2020 Jun 18. [Online ahead of print]
- Wu P, et al. Characteristics of Ocular Findings of Patients With Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) in Hubei Province, China. JAMA Ophthalmol. 2020 Mar 31. doi: 10.1001/JAMA Ophthalmol.2020.1291. [Epub ahead of print]